The Bridge Magicians

2001年刊行。247ページ。
ポーランドを代表する25人のプレイヤーの素晴らしいプレイが披露されています。(各選手の読み方がよく分からないのが難点ですが^^;;)巻末にはポリッシュクラブのビッドシステムの一覧がのっています。
名選手達のプレイを読んでいてつくづく感じることは、スクイズやエンドプレイなどのハイテクニックよりも、カードリーディングの素晴らしさです。カウンティングはあたりまえの前提として、ビッド、オポのプレイから4人全体のハンドを読んでいくカードリーディング、これこそがブリッジの土台を支える最も重要な要素であるということが見にしみました。
いくつか紹介します。

「Cezary Balicki」の章から
Seeing the Future
QT96 QT96
AQJT75 AQJT75
Q9 Q9
K K
J53 4
62 K984
AT752 K6
Q72 AJT984
AK872 AK872
3 3
J843 J843
653 653
ビッドはNorthから、1−(2)−2−(P)
         −3−(P)−4   OL:
EastはAで勝って、Jをリターン。これをダミーでラフ。さてここからどうするか。
良いプレイヤーは2の台では5枚でのオーバーコールは普通はしない。したがってEastは6枚とみる。Eastのでなくのリターンは、A,Kが分かれていてWestがAを持っていることを色濃くにおわせる。そしてまたWestがQを頭の3枚を持っていることも推測できる。するとWestはQを含む3枚にAまで持っている。もしWestがKまで持っていればWestは3とレイズしただろう。ということはKはEastにあると考えられる。と、ここまでは比較的簡単に推測できるかもしれない。では、ここから?
問題はトランプのブレーク。2−2なら容易だが、3−1ならどうか。Eastが5枚であることはたぶんないので、悪くても2−4ブレークとみて、トランプより先にをさわってみる。A、Q。Eastからはロー。Southからはを捨てる。J。EastからK。ここでAでラフ。Westはをディスカード。となるとやはりは3−1ブレークの可能性が高い。そこで、Kを取ってから、Tでフィネス。成功した。と、これは簡単な部類です^^

「Piotr Gawrys」の章から
Placing the Ace
AQ63 ビッド
W  N  E  S
   1C 1D 1S
P  2S P  3C
P  4S 


OL:
J876 J87
J
KQ53 Q5
KJ72 7
K54 K54
873
A74 7
1997年のヨーロッパオープンペア戦からだそうです。
OLのTをEastはQで勝ってKをリターンしてきた。このディフェンスだとAもEastにあることがわかるので、本当はA、Qとするほうが悩ましい。それはともかく、これでAがWestにありそうだということがわかるので、プレイは難しくなった。
ともかく、ダミーでをラフ。で、トランプに取りかかる。A、J。双方フォローして一安心。最後のハンドのをダミーでラフしてハンドにで戻る。このときEastは9を捨てた。次にハンドのKでトランプを刈り上げる。このときWest,Northともを捨てた。Kでダミーに入って(EastからはJ)上右図。さて、ここまででどう考えるか。
Eastは5枚、3枚、はリストリクティッドチョイスにより2枚。するとは3−3の分かれと想定できる。かつEastは先にを1枚捨てている。ということは。。
ダミーからローを出してEastから9が出たときダック。次にEastからAが返ってきたとき、ハンドでラフしダミーからは5を捨てる。そうしておいて、ハンドからロー。WestはAで勝ったが、残り2トリックを負けざるを得なくなっている。まさにマジック!
もし、Westが3枚目ののときにの代わりにを捨てていたとしたら?今度は上右図からQ、5とでスローインされて、Kが生還することになる。
全体図は次の通り。すでにお気づきかもしれないが、Eastがもし2順目にを返さないで、を返していれば、技のかかるタイミングがずれて、4はダウンしていた。しかしそのような早い段階で誰がそこまで読めただろうか。
AQ63
J876
J
KQ52
95 T84
A32 QT9
T965 AKQ42
T863 J9
KJ72
K54
873
A74
「Lukasz Lebioda」の章から
AT93 ビッド
W  N  E  S
         P
P  1H 3C 3D
3S 4D P  P
X  P  P  P

OL:
AT
AK75 AK75
J863 J
J
KQ2 2
J4 J4
A7542 A75
632 6
OLのTをEastがQでオーバーテークしてAを続けた。ダミーでラフ。さて、ここから?
唯一の危険はWestが4枚を持っていること。3順目Kでハンドに戻って、ハンドからローを出す。WestがQで勝つ。Eastはをディスカード。ここでWestは長考の末を出す。ダミーから9を出すと、Eastはまたしてもをディスカード。これで全員のディストリビューションが分かった。Westは5242、Eastは1507。
さてここから?
このまま9で勝つと、ハンドから再びローを出すために3枚目ので戻らざるを得なくなる。でローを出すとWestはKで上がってを出してくるだろう。それをダミーで勝ってハンドからを捨てたときハンドに戻れなくなって1ダウンする。そこで、9をQで取ってハンドからロー。WestはKで勝ってを出してきた。ここで上右図。さて、ここから?
Tで勝って、Jを取って、Aをハンドでラフしてハンドに戻って、Aをキャッシュする。と同時にEastがのスクイズにかかる! Jを取ってからをラフしてハンドに戻れるようにするために(ハンドのを1枚残しておくために)、先にハンドに戻る必要があるというわけですね。ふむ〜〜
AT93
AK75
J863
J
J8764 5
Q9 T8632
KQT9
T5 AKQ9874
KQ2
J4
A7542
632
「Andrzej Wilkosz」の章から
Reading the omens
A962 A9
K953 9
J
JT64 JT
T QJ87
T
7 A
Q9
K543 K543
AJ
Q96
AK75 7
ビッドはEastから(1)−X−(2)−3−(P)−3
        (P)−4
OLは2。これをEastはKで勝って3をリターンしてきた。さて、ここでどう考えるか。が3−2ブレークなら10トリックは簡単。Qの配置次第では11トリックもあり得る。
しかし、ここで考えてみよう。ビッドからWestはかなり弱いハンドであることが分かる。にもかかわらずをサポートできるのは何故か。がシングルトンだからサポートできるに違いない。で、もしWestがシングルトンならきっとOLはだっただろう。しかしWestはそうしなかった。そしてまた、今度はEastのリターン。ダミーのを見た上で、Qを持ちつつその下からリードしてくるだろうか?これらのことから、QはEastにあって、Westがシングルトンという危険性があることを察知した。
そこで3をAで取って、ラフ。でJでフィネス。A、Qをラフ、Kハンドからは捨て。で8順目、ダミーからロー。Eastは少考の後をディスカード。ハンドのKで勝って、上右図。
ここからK、Aとやって、11順目ダミーから9。これででさらに1トリックを確保。4メークとなった。
このプレイは1981年のベスト・プレイド・ハンドに選ばれた。ただ、OLがTならダウンだった(OLされそうにはないが)。

と、こういう興味あるハンド解説が満載されています^^



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