2002年刊行。205ページ。
「Inference」とは、推理とか推論という意味です。
で、イントロダクションの冒頭にこう書かれています。「トップエキスパートが他の人たちと最もちがうところは何だと思いますか?それは、エントリーシフティングスクイズのような高度なテクニックではありません。そのようなハンドは、それによって差がつくほど頻繁には出てきません。また優れたビッディングシステムでもありません。ウィークNT、ストロングNT、プレシジョン、2オーバー1、ポリッシュクラブなど様々なシステムも長い目で見れば結局ほとんど差は出てこないのです。何が最も違うか。それはトップエキスパートは52枚のカードを考えることができるということです。ビッド、プレイ、ディフェンスを通じて52枚のカードが分かるようになっていくか、そこが最も違うところです。」
(^_^)3 フムフム ここを読んで、すごく興味をそそられました。
代表的な例として、次のハンドが掲げられています。
バル(あなた)vsノンバルでLHOが3オープン。パス−パスで流れてきてあなたは
83
A
653
AKQ9754 というハンドを持っています。ここでどうビッドしますか?
10人中9人は4とビッドすることでしょう。そういう方々は想像力を欠いているか、ギャンブルを好まないかです。よく考えてみましょう。いいバル状態でLHOはソリッドな
で果たして3
というでしょうか?そんなことはないはずです。ゲームルーズの危険性がありますから。最も考えられるもち方は
AQJxxxxの7枚カードでしょう。では、RHOが
KxxとかAxxだったらパスするでしょうか。いや、いいハンドならきっと4
とレイズしてメークしにくるはずです。悪いハンドならサクリにくるかもしれません。そうするとパートナーが
のアナーを持っている可能性が最も高いです。
Jxxであっても、その場合はオポの
がブロックする可能性が高いです。もうお分かりのように、ここでは3NTをビッドするのが最もすぐれたビッドです。
こういう読み、考え方を一度もしたことがない方はぜひこの本の一読をお薦めします。
全体構成は
第1部 ビッドとOLが推理の基本
・40から引き算する
・イマジネーション
・オポのコンベンションからアドバンテージを得る
・あなたとパートナーのみがビッドしているとき
・安全に競り合う
・強さを隠す
・オポのビッドを信用する
・その他のビッドの問題
・オープニングリード
第2部 プレイする上での推理
・オポのビッドから推理する
・仮説を立ててプレイする
・あまり上手でないオポのプレイから推理する
・ディストリビューションに応じてプレイを変化させる
・ディフェンダーのプレイにより推理する
・その他の推理
第3部 ディフェンスする上での推理
・ヘジテーション
・第1トリック
・基本的なディフェンスのシグナル
・論理的例外的プレイ
・Granovetterシグナル
・隠す
・パートナーにミスさせないようにする
・ネガティブな推理
・パートナーの救済
・パートナーを迷わせない
・フォルスカード
・パートナーを信じる
・オポーネントを信じる
となっています。「Dormer on Deduction」と内容的には似ていますが、ビッドをする上での考え方ものっており、とてもおもしろかったです。少し紹介します。
第1部「あなたとパートナーのみがビッドしているとき」から
5枚メジャーシステムでパートナーが1でオープン。あなたは
AT843
A96
AT76
A というハンドを持っています。さて、どう考えてどうビッドしていくか。
多くのプレイヤーはジャコビー2NTをビッドすると思います。サポートと良い点があることをパートナーに知らせるために。あるいは2
とビッドする方もいるかもしれません。
ここで、考えることは1オープナーがいろいろなハンドパターンであったとしてもスラムの可能性が極めて高いということと、あなたがいかにスラムインビテーションしてもAのないパートナーはスラムにいこうとしないであろうことです。
KJ652
QJ8
QJ
J75 こういうオープンしないようなハンドですら6
の可能性は75%くらいあるということです。
したがって、ここでは気をつけることは、あなたはスラムのインビテーションをしてはいけないということです。スラムはあなたが主導権を握った上で最低でも6、さらには7
をも狙っていくということです。そのためにはどうするか?
まず4とスプリンタービッドをします。パートナーはスラムの興味はないのでおそらく4
とくるはずです。そこで4NT(RKC)を使います。で、パートナーが1コントロールを示したとします(おそらくは
K)。ここで、あなたは5NTとビッドします。これはKアスクというよりも、このビッドによってパートナーはあなたが4枚のAを持っていることを知ることに大きな意味があります。と同時に、
Qの心配はないということも示しています。ここにいたってパートナーは
と
はノールーザーということが分かるはずです。あとは
と
がノールーザーと計算できればパートナーは確信を持って7
をビッドすることでしょう。例えば
KJ9652
KQ
J4
Q53などのハンドの場合。
言い換えれば、こういうハンドは、パートナーから情報を引き出すのではなく、パートナーがファイナルディシジョンができるようにあなたのハンドをっできるだけ正確にパートナーに示す必要があるハンドなのです。
(^_^)3 フムフム 形とかコンベンションになじんだビッドをするのではなく、こういう生きたビッド、パートナーがどう考えるか、どちらが主導権を取るか、そしてどっちのハンドを相手に示すべきか、そういうことをいろいろ考えて生きたビッドができるようになりたいといつも思っていますので、やはりそうなのかととても参考になりました。
この他のも興味ある記述が続きます^^
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