1942年に起きた殺人事件の犯人をなぜか追うことになった著者 Matthew Granovetterが主人公となりつつ、殺人事件の被害者の残したまずいビッド、プレイの記録をもとに、様々な指摘、教えが行われていきます。301ページ。
この本の読者対象はすべてのレベルであるとし、それぞれごとにこの本を読むメリットが最初に書かれています。特にアドバンスプレイヤーになるために、知らないうちについた悪いくせを直すのに是非読んでほしいと書いてあります。
全体構成は
第1章 Aからリードしないことについて(OLの考え方)
第2章 パートナースートのサポートをためらうな
第3章 パスはベストビッド
第4章 競り合いのビッド
第5章 競り合いでの失敗例
第6章 ペナルティーダブルへの対応
第7章 パートナーに分かりやすいディフェンスを
第8章 コンベンションを使いすぎることによる失敗
第9章 スラム
第10章 プランを立てるまで1トリック目をプレイしない
第11章 スポーツ心理学
第12章 倫理
第13章 事件解決
となっています。
いくつか紹介します。
第1章「OL(Aのリードをしないこと)」から
N | ビッド W N E S 1D パス 1H!1S パス 2S パス 4S OL: ![]() 結果:making4 |
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W(Marcel) | ![]() |
E(Marie) | |
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S | |||
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このボードが記録のスタートです。Aのリードと1
のレスポンスのところにしるしがついていて、ポストモーテムでの議論の後がうかがわれます。(トランプリードなら1ダウン)
第1章では
「パートナーのビッドしたスートを常にリードするのは最善ではない」というのもあります。例として、
West North East South(あなた)
1C 1S 1NT パス
2NT パス 3NT パス
となったとき、Southのあなたのハンドが
(a)43
KJT52
T54
743
(b)43
KJT52
KT4
743
この2つのケースで、(a)の場合はをリードし、(b)の場合は
をリードするとあります。そのちがいはなぜか。
(a)の場合、ビッドとあなたの絵札からパートナーは10〜12HCP。すると1オープンは普通で、必ずしも
に絵札が集中したハンドでないかもしれない。
リードでコントラクトを落とすにはパートナーが
Aを持っていれば可能だが、
リードで落ちるには、パートナーが
の強いスートを持っていることとエントリーが必要になってくる。
(b)の場合、パートナーは8HCPくらいしか持っていない。にもかかわらずのOCをしたということは、パートナーの
は非常に強いということを意味する。
第2章「パートナースートのサポート」から
「最初パスして、後でレイズしないこと!」
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ビッド W N E S 3S パス パス 4H パス パス 4S パス パス ? |
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競り合いのビッドの中で最もやってはいけないビッドの一つが、パートナーがプリエンプティブオープンに最初パスしておいて、後でレイズすることであると書いてあります。「ディレイド・レイズ」と呼ぶのだそうです。上図がその例です。ここでEastはダブル、5、5
様々な選択をできる立場にあって、勝利者のポジションにあるとされています。もし最初にSouthが4
とレイズしていたら、そのような余裕ある判断はE-Wにはできないということです。
第3章では
「パス」の有効な使い方、1NTオープンについての考え方、ショートマイナースートでのオープンの考え方など興味深い記述がなされています。
第7章では
「カウント」の仕方について述べてあります。
カウントは、数字で計算していくものではなく、「See」するものだと書いてあります。多くでてくるディストリビューションのパターンは10パターンなので、あらかじめそれを覚えておいて、あとはそのパターンを4つのスートにあてはめていけばいいだけとされています。その10パターンとは
バランス アンバランス ワイルド
4333 4441 7321
4432 5431 7222
5332 6331 5440
5422 5521
5322 6421
であるとしています。いったんこのパターンを覚えると、いちいち計算して覚えていくのでなく、4333というハンドパターンを一くくりの形(絵)として覚えていくことができると書いてあります。
第10章ではZiaさんがなぜか登場して、心理的側面も含めたプレイの仕方について述べられています。
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Both Vul コントラクト 3NT by South OL: ![]() 1ダウン |
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このハンドをどうプレイするか。実践では、SouthのMarcelはQのOLをハンドの
Aで勝って、ハンドから
Tをリード。Westはこれをダック。3回目以降に
を勝ってEastの
3を見て
にシフト。でダウン。さて、ダブルダミーでどう考えるか。
著者は、「ダミーのKで勝ってハンドからは
7を捨てて
Qでフィネス。これが勝てばメーク。負けてもEastは
を続けてくる可能性が高い。」
Ziaは「しかしダミーからをリードしたときWestは
Jを出すだろう。すると
Kで勝ったWestは
をリターンしてくる可能性が高い」
「もちろんその通り。そこで最初のQをダックする。するとWestは
を続けてくる。で即クレーム」
Zia「そんなに簡単にWestはだまされないだろう」
著者「OK。ではOLをAで勝って、ハンドからロー
を出してダミーの
8でフィネスというのは?」
Zia「ほんとにそういうプレイをする?」
著者「いや。私なら、おそらくハンドのAで勝って
でダミーにわたり
をフィネス。Westはまさか私が
ATxというテナスとは思わず
を返してくるだろう。」
Zia「私の方法は、ハンドのAでまず勝つこと。ここまでは同じ。次にハンドから
Qを出してダミーの
Aでオーバーテーク。これで、もしかしたらEastが
Kを持っているかと疑念をいだかせる。で、次に
をハンドの
Jに向けてリードする!」「
だけがそれのみではセットされないセーフティースートである。そしてまた、
こそWeatからリターンしてほしくないスートだからこそ有力となる。仮にWestが
をリターンしてきたとしても、最後にはWestをスクイズにかけることもできる。ま、これは別の問題だけど。」「もしEastが
Aで上がれば
スートは即ブロックしてしまう。で、Eastがそうしなかったとしても
Kで勝ったWestは考えるだろう。オポーネントは
KをEastが持っていると私に思わせようとしていると。」「結局Westは
か
をリードして9トリック目を私に献上することになるだろう。」
このZiaのプレイ方針はアベレージプレイヤーの域をはるかに超えている。ただ、通常NTプレイでは、強い長いスートを隠して弱いスートから先にプレイすることによって、オポーネントがあなたに有利なリターンをしてくれることがしばしばあるkとは事実である。
ふむ〜〜。
という感じで興味深い記述が続きます^^
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