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The Abbot And the Sensational Squeeze

ブリッジの試合を題材にしたユーモア小説です。
僧侶のブリッジ仲間が、プシッジで遭遇する様々なプレーやディフェンスなどを教訓をひそかに盛り込みつつ おもしろおかしく描いていっています。
主人公のアボットは、トランプ・クーやスクイズもできるなかなかの腕前ですが、ビッドやプレーの考え方にやや型にはまったところがあって、それがしばしば不運を増長させ、思わぬダウンを喫したり、メークを許したり、あげくのはては初心者からプレー方法について注意を受けたりして笑わせます^^
しばしば、思わぬスクイズがメークしたりしますので勉強にもなります。いくつか紹介します。

「11.The Abbot Carries on Crusing」
K52 W   N   E   S
    アボット    ドリス
            2S
P   3S  P   4NT
P   5H  P   5NT
P   6D  P   7S
P   P   P
J762
96
AK94
93 QT8
AQ872 JT543
QT532 J876
AQJT9  863
AK54
West「私のリード?」そう言ってWはトランプ()をリードしました。
ドリスはダミーを見て驚きました「A2枚と答えたんじゃないの?」
アボット「RKCじゃないんですか?現代ではみんなRKCを使うと思っていましたもので。」
East「A1枚のときは5Dが正しいレスポンスです。」
West「その通り。そして、5NTはキングの枚数アスクで、それもレスポンス
 が間違っていますね。」
ドリス「ま、ともかくリードはラッキーだったわ。」
ドリスは、ダミーのKで勝ってすぐAでKを捨て、ここでプレープランを考えはじめました。Kでを1枚捨ててトランプを走れば、Qを持ってる人がを捨てるかもしれない。「Kをお願いします。」
ドリスがハンドからを1枚捨ててを走ると、Eastからが捨てられ、5が13トリック目となりました。
East「Aはリードできなかったの?」
West「ステファンがグランドスラムには常にトランプをリードしろって教えて
 くれました。いずれにしても、AQからAをリードするのは好きじゃないん
 です。ディクレアラーがKを持ってることがありますから」
アボット「すばらしい。よくメークしましたね。トランプリードをAで勝って
 A,Kを取って、6−KでダミーにわたってAKの下にを捨てて、
 をハンドでハイラフして、5でダミーにわたってエスタブリッシュした
 下にKを捨てればコールドでしたね!」
East「パートナーに向かってそんなに甲高く話すもんじゃありませんよ。特
 にミスビッドしたあとなんですから。」
アボット「どうなってるんだ、まったく」
13.Brother Stephen Joins the S-Club
A97 W   N    E   S
ザビ  ジャス  アボ ステ
 エル  ティン  ット  ファン
    1D   P   2H
P   3D   P   4NT
P   5H   P   6H
P   P    P
83
AK9753
96
542 KJT8
754 T2
T6 QJ4
QJT53 A872
Q63
AKQJ96
82
K4
今回の相手は初心者ペアです。
に対してザビエルはQをリードしました。
ジャスティン「ミニマムなんです。申し訳ない」
ステファン「おー。もうちょっと持ってると思ったんですが」
アボット「ジャンプシフトの意味が分かってますか。パートナーにスラム可能性ありということをジャンプシフトで示したら、スラムにいくかどうかはパートナーが判断するんです。」
Qに対して、アボットはリードなら簡単に落ちたのにと思いつつAで取っ
てさてどうするか考えます。ディクレアラーはを3枚は持ってはいないだろ
う。3枚持ってればザビエルはシングルトンをリードしたにちがいない。
ディクレアラーのが1,2枚だとすると、をラフしてエスタブリッシュし
て、Aでダミーにわたってエスタブリッシュしたを走るだろう。ワールド
クラスのディフェンダーの答は「メリマック・クー(Merrimac Coup)」だ!
闘牛を倒す闘牛士のような気持ちで、アボットはKを出しました。
ステファンはダミーのAで勝って、をエスタブリッシュできないことを悟りました。そこでトランプを刈り上げてウィナーを取って次のようなポジションになりました。
            ジャスティン
            
            
            AK9
            
        ザビエル    アボット
        5        
                 
        T6       QJ4
        Q        
            ステファン
            
            
            82
            
ここで、最後のトランプ6が出され、ザビエルはQを ダミーからは9が出されました。アボットは、ザビエルはをガードしていないことははっきりしているので、ベストチャンスを祈ってJを捨てました。
ステファンはが何枚出たか思い出そうとずっと考えていました。ただ、が守られていることははっきりしているので、勇気をふるいたたせて6を出しました。ザビエルが力なく5をフォローして、めでたくスラムがメークしました。
アボット「信じられない!これまでの中で最も素晴らしいディフェンスをした
 のに、全く報いられなかったとは」
ステファン「こののホールディングで3トリックも取れたのはラッキーでし
 た。先週ルーカスと対戦したとき、同じような場面でやはり私も間違った
 カードを捨ててで3トリック取られたんです。」
アボット「ディスカードミス?」「私はスクイズにかかったんですよ。なんと
 いうことだ。分かってなかったんですか」
ステファン「スクイズ?」「私はスクイズをしたんですか?」まるでロトにあたったようにステファンはあえぐように言ったのでした。
こんな感じで、おもしろおかしく話が続きます。
アボットがザビエルにクルージングでのブリッジでひどいパートナーに出会ったとぐちをこぼしたのに対して、
「上手じゃないパートナーと組んだときは、君が全てのハンドでプレーするようにビッドを変えて、またパートナーがディフェンスしやすいようにプレーしてあげるのがコツさ。それは全くの芸術だと。」と諭しているのもちょっとおもしろかったです。



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