(ブックレビュー詳細)

Understanding The Contested Auction

2001年刊行の新しい本で、「競り合い」のビッドで考えるべきいろいろな要素が解説されています。
第1章 ODR(攻撃力と防御力の比率)
第2章 トータルトリックの法則
第3章 スーツオープンに対するスーツオーバーコール
第4章 OCの後のオープナーのパートナーのビッド
第5章 テークアウトダブル
第6章 テークアウトダブル後のオープナーのパートナーのビッド
第7章 2スーターのオーバーコール(マイケルス、2NT、ゲシュテム)
第8章 1NT(オープン、OC)に対する競り合い
第9章 バランシンぐポジションでのビッド
第10章 様々なテークアウトダブル(レスポンシブ、サポートetc.)
第11章 プリエンプティブビッドに対するビッド
第12章 高いレベルでの競り合い
第13章 2スーターフィットのときの考え方
第14章 ストロング1C、マルチ2オープンに対するビッド
第15章 4NT,5NT,キュービッドなどの使い方
第16章 ペア戦でのビッド戦略
全編を通じて流れているのは「トータルトリックの法則」です。第2章の冒頭で、この法則の重要性は強調してもし過ぎることはない。この法則なしでは 競り合いのビッドで正しい判断をすることは極めて困難になるであろうと述べています。
第1章のODR( Offence to Defence Ratio)では

(a) A93 AQ32 A74 943
(b) KQJT98 8 974 743
この2つのハンドを掲げて
(a)は、オープンはしてもオーバーコルはしないハンド
(b)は、オーバーコールはしてもオープンはしないハンド(ウィーク2は別として)
として、オフェンシブトリックがディフェンシブトリックより圧倒的に多いハンド(b)をODRが高いと定義し、ODRの高いハンドほどオークションに介入していくことがより重要であると述べています。
第3章では オーバーコールとレスポンスの例が掲げられています。

   S  W  N  E
   1  2  No ?  という場合で、Eのハンドが

(a) 843 AT73 A63 JT8
 この場合は、2NTとレスポンス。で走れるだろうし、のフィネスもオープナーを通すことになるので成功率高いからとされています。
(b) T43 AT73 AK3 JT8
 このときは、3NT。 (a)と同じ要領です。
(c) AJ83 K752 KQJ6 
 このときは、2NT。14hcpありますが、フィットがないのと、が1ストッパーなのが大きなマイナス要素だとされています。
第6章では ダブル後のビッドで
   
   S  W  N  E
   1  X  XX  ?

(a) J854 9743 832 94
(b) 94 974 JT865 972
(c) 832 9732 J854 94
(d) 83 KQJT65 J85 94
(e) QJT84 9742 9 J98 と持っているとき

(a) は1。ここでパスするとWはマイナースーツをビッドし自体がより悪化するのを防ぐためにとされています
(b) は2
(c) はパスして、ビッドしにくいハンドであることをWに示すのがポピュラーとされています
(d) は1NT! それがダブルされたら2。これをペナルティーパスすると、Wはきっと(c)のようなハンドだろうと考えて 1や2とビッドするかもしれないからとされています。
(e) は2 これはプリエンプティブ。クロスラフが見込めるからだそうです
第11章では、プリエンプトに対する工夫として、プリエンプトオープナーは8hcp持ってると仮定し、残りの強さは、他の2人に均等に分かれているものとして考えるという工夫が示されています。

 Sで 94 KJ9865 AK KQ3
というハンドを持っていて、Eが3とオープンしたとします。
そのとき、Eは8hcp。Sの自分は16hcpなので、残り16hcpはNとWに均等に分かれているものと仮定。NSで24hcp。
はEが7枚と仮定すると、残りは NWに2枚ずつ。はEが1枚と仮定すると残りは NWに3枚ずつ。すると、はEWが9枚、はNSが9枚。18トータルトリックであるということは、4をビッドすることが正しい。
 また、別の観点から、パートナーのNは8hcpで2枚の有効なカードを持っている仮定したとき、Sのルーザーは「5」であるから、Nの2枚で2ルーザー消せれば3ルーザーとなり10トリックは取ることが可能であるとも考えられる
と書いてあります。
このように、さまざまなちょっとした工夫を盛り込みつつ、現代の競り合いの方法が体系的に示されており、「古典」を踏まえて読めば実践力が身につくと思われます。


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