Probabilities & Alternatives in Bridge

イタリアで2000年に、イギリスで2002年に刊行。128ページ。
確率の考え方がすごくよく分かります。もちろん、理系でその道の専門家の方はもとから承知のことかも知れませんが、確率が刻々と変化するその変化具合についても明確に理解することができます。
全体構成は
第1章 考え方の基本
 チャンスと確率
 空き地理論
 テーブルA:残りカード枚数とブレーク確率
 テーブルB:ディストリビューションの確率
 チャンスの結合
 確率のバリエーション
 リストリクティッド・チョイス
第2章 ハンドの分析
第3章 確率データ
 他のスートのディストリがわかっている場合の確率表
などとなっています。

興味深い分析もありますので、いくつか紹介します。

第1章「確率のバリエーション」から
 AJxxx

 Kxxx
この9枚フィットのスートで全勝するために、どういう方法が最も確率が高いかという問いかけです。
2つの方法があります。
(方法A)KをキャッシュしてQが落ちなければJでフィネス
(方法B)K,Aと取って、シングルトンまたはダブルトンQが
  落ちるのを期待する
 方法Aの成功確率は、が3−1(LHOが3)(49.74%X1/2=24.87%)、または2−2でQがLHO(40.70%X1/2=20.35%)、またはが1−3ブレークでLHOがシングルトンQ(49.74%X1/2X1/4=6.22%)
  計51.22%
 方法Bの成功確率は、が2−2(40.70%)またはが3−1ブレークでシングルトンQ(49.74%X1/4=12.44%) 計53.14%
このように、確率的にはK,Aとプレイするのが約2%まさるというのが通常の本には書いてあります。
 さらに分析を続けて、Kと取ったとき双方がフォローし、次にハンドからスモールを出したときLHOがフォローした場合に確率がどのように変化するかです。
この場合、メーク可能性のあるディストリビューションは2つしかありません。
(a)QxxがLHOでRHOはシングルトン
(b)LHOはxxで、RHOはQx
ここで(a)の可能性は、6.22%(LHOが3−1の確率24.87%X1/4=6.22%)
(b)の可能性は、6.78%(2−2でQがオフサイドの確率20.35%X1/3)
これを100%の置きなおすと
 (a)は47.85%
 (b)は52.15%
となって、最初の計算の2%から4.30%へとK,Aプレイの確率が増加しています。
(ちなみに、AQxxxJTxxxxの10枚カードが向かい合っている場合、ハンドからのスモールにLHOがフォローしたときは、フィネスが48%、ドロップが52%となって、最初の確率(フィネス50%、ドロップ52%)よりドロップがより確率が高くなります。)
(^_^)3 フムフム(完全に理解できたわけではないですが(^^ゞ)

 また、別のスートのディストリビューションがわかっている場合に、もう一つのスートのブレーク確率がどのように変化するかについて表になっています。例えば、
あるスートの残りが4枚とすると、そのブレーク確率は、4−0=9.56%(4.78%X2)、3−1=48.74%(24.87%X2)、2−2=40.70%などと最初の状態ではなっていますが、別のスートのブレークがわかっている場合、例えば6−3ブレークとなっているときは
  4−0:1.47%
  3−1:14.71%
  2−2:39.71%
  1−3:35.29%
  0−4:8.82%
とブレーク確率が大きくRHOの傾斜することになるとのことです。

第2章「ハンドの分析」から
○ハンド2

  AT53
  KQ3
  J94
  AQ2

  K92
  A76
  K632
  KJ4

コントラクト:3NT by South
OL:
まずを先にプレイする場合の成功確率:92.20%
を先にプレイする場合の成功確率:97.03%
となっています。(で1トリック取れる確率の方が大)
 また、ATxxとK9xの組み合わせで3トリック取る確率は
(A)A,Kとキャッシュして3−3ブレークか4−2ブレークで
  ダブルトンQまたはJを期待する:70.19%
(B)最初9に向けてプレイ。Westが勝てば次にKを取って
  双方スモールをフォローすれば、Aを取る:74.97%
(C)(B)と同じで最後にAでなくTでフィネスする
   :63.34%
(D)最初Kを取って、次にTでフィネスし、次にAを取る
   :71.80%
(E)Aを取って、9に向けてプレイ:71.80%
(F)最初Tに向けてプレイし、Eastが勝てば、次にA,K
  とプレイする:70.12%

○ハンド12
KT6 ビッド
 S   N
 1C  1S
 1NT 2C
 2S  2NT
 3S  4NT
 7NT
K85
KJ7
QT97
9542 73
4 QJ9732
Q63 9842
J8642 3
AQJ8
AT6
AT5
AK5
コントラクト:7NT by South
OL:
1順目をTで勝って、AKとプレイしたところEastがの2回目にをディスカード。T,Qとプレイ、Eastはをディスカード。を全部取ると、Eastはをディスカード。
残り5枚で
     
   A8 
   KJ7 
   

   
   KT6
   AT
   
となって12トリック確保。9順目以降A,Kと取ると、Westが5枚目のをディスカード。ここまでで、ディストリビューションは、West:4135 East:2641であることが分かりました。さて、ここでをフィネスするかドロップ(スクイズ)を狙うか。
 フィネス(QがWast):3/7=42.86%
 ドロップ(Eastをスクイズ)=4/7=57.14%
単純計算ではこうなりますが、ここで、リストリクティッドチョイスの理論をも使って再計算するとあります。すなわち、QがWestにあればWestはよりからのOLに傾くのに対し、QがWestになければのOLをしたかもしれない。そこで、QがEastにある確率は4/7X50%=2/7とみて
QがWest=60%
QがEast=40%
ということから、フィネスが正解となるというものです。
ふむ〜〜。



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