Masterclass

2005年刊行。207ページ。
著者Gittelmanが出会った現代のトップエキスパートの様々なプレイが掲載されています。当然ながらハイレベルでおもしろいです。1話nituiki
2ページ〜6ページとなっていますので、毎日1話すつ読み進んでいくこともできます。
いくつか紹介します。

○「Adventures In Card Play」から
 ノルウェイのGeir Helgemoの素晴らしいプレイが紹介されています。なぜ彼が世界のトッププレイヤーの多くから賞賛されているか分かります。
AKT42 ビッド
W   N   E   S
            1H
P   1S  2D  P
P   3D  P   3H
P   4H

(South:Helgemo)

OL:
974
A2
T72
3
AJT86
876
AK65
 OLは。ナイスリードで、をダミーでラフすることが難しくなった。EastはQ。これをAで勝つ。さてここからどうプレイしたか考えてみて下さいとのことです。
 Helgemoは10トリック取るためのベストチャンスはをエスタブリッシュすることと考え、A、Kと取った。このときEastからJが落ちてきた。3回目のスモールのときEastは8。これをハンドでラフ。次が5トリック目。さて。
 HelgemoはJ。Westからは2。EastがKで勝つ。Eastは3枚目のをリターン。Southは8。ここでWestが長考。この6トリック目の時点の全体のハンドは下図。(Southの4勝1敗)
T4
9
A2
T72
Q9
5
KT QJ9543
QJ93 4
T8
87
AK65
ここで、Westがを捨てると、Southの4枚目のが10トリック目となる。を捨てると9でダミーに入ってをラフされ、最後の10がトリック目となる。そこでを捨てるしかないが、ここでTを捨てるのはまずい。なぜか。次にでスローインされ、を出さざるを得ず、それが10トリック目を献上することになるからだ。そこで、Westは6トリック目にKを捨てる。でも、Helgemoはメークする。
7トリック目、をダックする。EastはWestにTで勝たせないために自分で勝たざるを得ない。
で、8トリック目、Eastがを仮に出したとするとHelgemoは再びダックしてWestにスローインする。そこでEastとしてはをリターンするしかない。Westは依然は捨てられないが、は大丈夫のように見える。そこでスモールをディスカード。この段階で下左。
T4 AKT42
974
A2
T72 T72
Q Q9865 J7
32 KQ5
Q953 KT QJ9543
QJ93 4 QJ93 84
3
T AJT86
876
AK65 AK65
Helgemoは9トリック目、をラフしてWestのイグジッドカードのをなくしておいてから、10トリック目ハンドからスモールを出した。WestはJで勝って、Qを出してきた。ハンドで勝たざるを得ず、がブロックすると考えて。しかし、Helgemoはトップで勝って、でダミーに入ってTが10トリック目となった。
Wow! 全体のハンドは上右図。
すごいですね。感動しました。

○「Hamman Has The Last Laugh」から
 2003年のVanderbilt Cupでの対Nickelチーム戦です。
654 Both Vul
ビッド
W  N  E  S
   1D X  1S
2H P  P  2S
All Pass

(South:Hamman)
(East:Gitelman)

OL:
J7
KQJT96
K3
3 A982
QT954 K82
A853 4
Q65 AJ872
KQJT7
A63
72
T94
 ビッドでは、Eastのダブルに対してWestは3とビッドすべきとGitelmanは感想として書いています。
この2はメークにはほど遠いですがHammanのテクニックで1ダウンにしかできなかったとのことです。以下プレイです。
 OLのTにHammanはダミーのJをかぶせた。これがうまい。はいずれ負けざるを得ないことを知った上でJそかぶせて私(Gitelman)のKに勝たせる。これでダミーのKを守っている。
 2順目、ここでのディフェンスはむずかしい。WestがAを持っているだろうということは分かる。しかしシングルトンをリターンするとダミーのがセットアップされるので気が進まない。ほうっておいてもいずれラフのチャンスはあるだろう。パッシブなリターンも考えた。いずれにしてもを返しておけばHammanは6トリックしか取れず。200点取れたはず。しかし、ここで私は2という疑問手を出してしまった。その段階では、いいアイデアと思ったのだがうまく運ばなかったのだ。HammanはKで勝って、A、ラフとしてダミーの最後のが引かれた。私はA。このとき、HammanはTを捨てた!アンブロック!この段階のハンドは下図。
Southの3勝2敗。
KQJT96
K3
98
Q9
A85 4
Q65 AJ872
QJ7
72
T94
このTアンブロックの意味がお分かりであろうか。
ここで、私はシングルトンをリターン。Westからが返ってくればよかったが、Jの配置がWestからは分からないのでが返ってきた。私はこれをラフして最後の8を出した。ここで、Hammanは7を出して、私の8を勝たせた!私はエンドプレイされたのだ!Hammanはで1個損する代わりにで3個負けるところを1個しか負けず、差し引き1トリック稼いだのだ。
裏はEWが33メークで、オポに2imp入ることとなった。

○「The Femke Solution」から
 2001年のインターナショナルペア戦から。オランダ人の新進気鋭のプレイヤーFemke(女性)のプレイからで、エキスパートはどうして正しいゲスをすることが多いのかということが分かるハンドとして紹介されています。
873 ビッド
W  N  E  S
   P  P  1D
P  1H 1S 3C
3S 5D All Pass

(South:Femke)
(East:Gitelman)

OL:
7652
KT73
K4
Q
KJ
AJ984
AQ973
Westは、A、私(East)は5、これはアップサイドダウンシグナルでカモン。Westは2、私K、これをSouthはラフ。FemkeはK、Aと続ける。は2−2で私からQが落ちた。
5順目から、K、A、Q。このとき、私はをディスカード。8順目4枚目のをダミーでラフし、5枚目のがエスタブリッシュした。そのときのハンドは下左図。
8 873
765 7652
T KT73
K4
AJ42 KT965
A83 QT94
52 Q6
T652 J8
Q
KJ KJ
J9 AJ984
9 AQ973
9トリック目、ダミーから。私はスモール。ここでFemkeは正しくゲスする必要がある。KかJか。しかし、これはもはやゲスではないのだ。明確に正しい答がある。あなたには分かるだろうか?
 Femkeは正しくJを出して、コントラクトはメークした。全体のハンドは上右図。なぜJと分かるのか?私のオーバーコールとAは分かれているというセオリーからすればAは私(East)にありと考えても不思議ではないはず。Femkeの正しい推測はビッドからではなく1順目のプレーにあった。私ののエンカレッジシグナルにあった。もし私(East)がAを持っていたとすれば、2順目ににスイッチさせるため私はにノンカモンしたはずだ。Femkeのがもっと強くて、WestがKを持っている場合には2順目シフトが唯一の落とし目になるからだ。
(^_^)3 フムフム

○「Diamond Jubilee」から
 2005年のUSAチームトライアルから。GitelmanはNickelチームのメンバーとして出場しているそうです。これに勝って今年ポルトガルのエストリルで開かれるバーミューダボウルに出ることになったとのことで、最新の情報が最後に掲載されているということです。
    North(Moss)
     A3
     Q8
     K9
     KQJT532

    South(Gitelman)
     
     KJ752
     AJT64
     A64
ビッドは(ノンバル)
 West   North   East  South
 Berkowitz  Moss  Cohen  Gitelman
  3S    3NT    4S    5NT
  P     6C     P     6D
  All Pass
OL:
 まず、ビッドについては、5NTでなく5とビッドすべきだったとしています。その場合、パートナーが自分自身でベストコントラクトが何か判断できないときは5NTとビッドするはず。なので6には安心してパスできると書いています。なるほど^^
 さてプレイです。私は1順目ダミーからカードを引く前に5分考えたとあります!
 まず、Qをどっちが持っているか。パーセンテージプレイはをハンドで勝ってダミーの9でフィネスすること。WestがQ頭の2枚か3枚のを持っているときに有効なプレイ。他方、Westはが長いのでは短いかも。でもその場合でもQダブルトンの可能性はWestの方が高い。ずっと考えた末、私はQはEastが持っていそうだと考えた。なぜか。もし、Westがでトリックが取れそうならシングルトンはリードしないだろうと考えたのだ。そこで、1順目をダミーで勝って、Kをキャッシュし9を流した。Westから8が落ちてきた。ふー。
 しかし、まだまだ。ここで方法は枝分かれする。一つはをラフしてハンドに戻ってAを出す方法。が3−3ならこれでメーク。もう一つが私が取った方法。AでハンドのAを捨ててを出す方法。Eastがフォローし、Westがラフできなかったとき、成功が分かった。Eastは3順目のをラフ、私はオーバーラフし、を刈り上げ、をダミーのQに向けてリード。EastがAで勝ってをリターン。これをラフしてを試したら予期したとおり3−3ブレークでコントラクトはメークした。
 なぜ、が4−2ブレークと読んだか?ビッドと1順目のプレイから、Westは7枚、1枚と考えた。するとWestのハンドは、
7321か7231。どちらかを当てなければならない。数学的には全くのゲス。しかしWestが7321だろうと考えたのには2つの理由がある。
 第一。Westはの2順目に8をフォローしたこと。ちょうどフォールスカードをすべきポジションに彼はいたわけだが、いつもフォールスカードをするとは限らない。そこで、私は8が彼の最後のである可能性が50%以上あると考えた。
 第二。私の選んだラインの方がよりおもしろいラインであること。このような重大な局面にあっても、なおブリッジが「ゲーム」であるという事実を見失わなかったということだ。ブリッジがおもしろくて(fun)魅惑的(fascinating)であったので私は興味を持って、今まで興味を落ち続けてきているということである。全体のハンドは、下図。
A3
Q8
K9
KQJT532
KJ98752 QT64
964 AT3
82 Q753
8 97
KJ752
AJT64
A64
素直な心情の吐露と素晴らしいプレイ技術。Gitelmanのファンになりました^^



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