2005年刊行。207ページ。
著者Gittelmanが出会った現代のトップエキスパートの様々なプレイが掲載されています。当然ながらハイレベルでおもしろいです。1話nituiki
2ページ〜6ページとなっていますので、毎日1話すつ読み進んでいくこともできます。
いくつか紹介します。
○「Adventures In Card Play」から
ノルウェイのGeir Helgemoの素晴らしいプレイが紹介されています。なぜ彼が世界のトッププレイヤーの多くから賞賛されているか分かります。
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ビッド W N E S 1H P 1S 2D P P 3D P 3H P 4H (South:Helgemo) OL: ![]() |
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OLは。ナイスリードで、
や
をダミーでラフすることが難しくなった。Eastは
Q。これを
Aで勝つ。さてここからどうプレイしたか考えてみて下さいとのことです。
Helgemoは10トリック取るためのベストチャンスはをエスタブリッシュすることと考え、
A、Kと取った。このときEastから
Jが落ちてきた。3回目のスモール
のときEastは
8。これをハンドでラフ。次が5トリック目。さて。
HelgemoはJ。Westからは
2。Eastが
Kで勝つ。Eastは3枚目の
をリターン。Southは
8。ここでWestが長考。この6トリック目の時点の全体のハンドは下図。(Southの4勝1敗)
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ここで、Westがを捨てると、Southの4枚目の
が10トリック目となる。
を捨てると
9でダミーに入って
をラフされ、最後の
10がトリック目となる。そこで
を捨てるしかないが、ここで
Tを捨てるのはまずい。なぜか。次に
でスローインされ、
か
を出さざるを得ず、それが10トリック目を献上することになるからだ。そこで、Westは6トリック目に
Kを捨てる。でも、Helgemoはメークする。
7トリック目、をダックする。EastはWestに
Tで勝たせないために自分で勝たざるを得ない。
で、8トリック目、Eastがを仮に出したとするとHelgemoは再びダックしてWestにスローインする。そこでEastとしては
をリターンするしかない。Westは依然
は捨てられないが、
は大丈夫のように見える。そこでスモール
をディスカード。この段階で下左。
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Helgemoは9トリック目、をラフしてWestのイグジッドカードの
をなくしておいてから、10トリック目ハンドからスモール
を出した。Westは
Jで勝って、
Qを出してきた。ハンドで勝たざるを得ず、
がブロックすると考えて。しかし、Helgemoはトップ
で勝って、
でダミーに入って
Tが10トリック目となった。
Wow! 全体のハンドは上右図。
すごいですね。感動しました。
○「Hamman Has The Last Laugh」から
2003年のVanderbilt Cupでの対Nickelチーム戦です。
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Both Vul ビッド W N E S 1D X 1S 2H P P 2S All Pass (South:Hamman) (East:Gitelman) OL: ![]() |
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ビッドでは、Eastのダブルに対してWestは3とビッドすべきとGitelmanは感想として書いています。
この2はメークにはほど遠いですがHammanのテクニックで1ダウンにしかできなかったとのことです。以下プレイです。
OLのTにHammanはダミーの
Jをかぶせた。これがうまい。
はいずれ負けざるを得ないことを知った上で
Jそかぶせて私(Gitelman)の
Kに勝たせる。これでダミーの
Kを守っている。
2順目、ここでのディフェンスはむずかしい。WestがAを持っているだろうということは分かる。しかしシングルトン
をリターンするとダミーの
がセットアップされるので気が進まない。ほうっておいてもいずれラフのチャンスはあるだろう。パッシブな
リターンも考えた。いずれにしても
か
を返しておけばHammanは6トリックしか取れず。200点取れたはず。しかし、ここで私は
2という疑問手を出してしまった。その段階では、いいアイデアと思ったのだがうまく運ばなかったのだ。Hammanは
Kで勝って、
A、
ラフとしてダミーの最後の
が引かれた。私は
A。このとき、Hammanは
Tを捨てた!アンブロック!この段階のハンドは下図。
Southの3勝2敗。
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このTアンブロックの意味がお分かりであろうか。
ここで、私はシングルトンをリターン。Westから
が返ってくればよかったが、
Jの配置がWestからは分からないので
が返ってきた。私はこれをラフして最後の
8を出した。ここで、Hammanは
7を出して、私の
8を勝たせた!私はエンドプレイされたのだ!Hammanは
で1個損する代わりに
で3個負けるところを1個しか負けず、差し引き1トリック稼いだのだ。
裏はEWが33メークで、オポに2imp入ることとなった。
○「The Femke Solution」から
2001年のインターナショナルペア戦から。オランダ人の新進気鋭のプレイヤーFemke(女性)のプレイからで、エキスパートはどうして正しいゲスをすることが多いのかということが分かるハンドとして紹介されています。
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ビッド W N E S P P 1D P 1H 1S 3C 3S 5D All Pass (South:Femke) (East:Gitelman) OL: ![]() |
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Westは、A、私(East)は
5、これはアップサイドダウンシグナルでカモン。Westは
2、私
K、これをSouthはラフ。Femkeは
K、
Aと続ける。
は2−2で私から
Qが落ちた。
5順目から、K、
A、
Q。このとき、私は
をディスカード。8順目4枚目の
をダミーでラフし、5枚目の
がエスタブリッシュした。そのときのハンドは下左図。
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9トリック目、ダミーから。私はスモール。ここでFemkeは正しくゲスする必要がある。
Kか
Jか。しかし、これはもはやゲスではないのだ。明確に正しい答がある。あなたには分かるだろうか?
Femkeは正しくJを出して、コントラクトはメークした。全体のハンドは上右図。なぜ
Jと分かるのか?私のオーバーコールとAは分かれているというセオリーからすれば
Aは私(East)にありと考えても不思議ではないはず。Femkeの正しい推測はビッドからではなく1順目のプレーにあった。私の
のエンカレッジシグナルにあった。もし私(East)が
Aを持っていたとすれば、2順目に
にスイッチさせるため私は
にノンカモンしたはずだ。Femkeの
がもっと強くて、Westが
Kを持っている場合には2順目
シフトが唯一の落とし目になるからだ。
(^_^)3 フムフム
○「Diamond Jubilee」から
2005年のUSAチームトライアルから。GitelmanはNickelチームのメンバーとして出場しているそうです。これに勝って今年ポルトガルのエストリルで開かれるバーミューダボウルに出ることになったとのことで、最新の情報が最後に掲載されているということです。
North(Moss)
A3
Q8
K9
KQJT532
South(Gitelman)
KJ752
AJT64
A64
ビッドは(ノンバル)
West North East South
Berkowitz Moss Cohen Gitelman
3S 3NT 4S 5NT
P 6C P 6D
All Pass
OL:8
まず、ビッドについては、5NTでなく5とビッドすべきだったとしています。その場合、パートナーが自分自身でベストコントラクトが何か判断できないときは5NTとビッドするはず。なので6
には安心してパスできると書いています。なるほど^^
さてプレイです。私は1順目ダミーからカードを引く前に5分考えたとあります!
まず、Qをどっちが持っているか。パーセンテージプレイは
をハンドで勝ってダミーの
9でフィネスすること。WestがQ頭の2枚か3枚の
を持っているときに有効なプレイ。他方、Westは
が長いので
は短いかも。でもその場合でも
Qダブルトンの可能性はWestの方が高い。ずっと考えた末、私は
QはEastが持っていそうだと考えた。なぜか。もし、Westが
でトリックが取れそうならシングルトン
はリードしないだろうと考えたのだ。そこで、1順目をダミーで勝って、
Kをキャッシュし
9を流した。Westから
8が落ちてきた。ふー。
しかし、まだまだ。ここで方法は枝分かれする。一つはをラフしてハンドに戻って
Aを出す方法。
が3−3ならこれでメーク。もう一つが私が取った方法。
Aでハンドの
Aを捨てて
を出す方法。Eastがフォローし、Westがラフできなかったとき、成功が分かった。Eastは3順目の
をラフ、私はオーバーラフし、
を刈り上げ、
をダミーのQに向けてリード。Eastが
Aで勝って
をリターン。これをラフして
を試したら予期したとおり3−3ブレークでコントラクトはメークした。
なぜ、が4−2ブレークと読んだか?ビッドと1順目のプレイから、Westは
7枚、
1枚と考えた。するとWestのハンドは、
7321か7231。どちらかを当てなければならない。数学的には全くのゲス。しかしWestが7321だろうと考えたのには2つの理由がある。
第一。Westはの2順目に
8をフォローしたこと。ちょうどフォールスカードをすべきポジションに彼はいたわけだが、いつもフォールスカードをするとは限らない。そこで、私は
8が彼の最後の
である可能性が50%以上あると考えた。
第二。私の選んだラインの方がよりおもしろいラインであること。このような重大な局面にあっても、なおブリッジが「ゲーム」であるという事実を見失わなかったということだ。ブリッジがおもしろくて(fun)魅惑的(fascinating)であったので私は興味を持って、今まで興味を落ち続けてきているということである。全体のハンドは、下図。
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素直な心情の吐露と素晴らしいプレイ技術。Gitelmanのファンになりました^^
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