Bridge,Zia and me

1999年刊行。191ページ。
世界のトッププレイヤーの一人である、マイケル・ローゼンバーグ氏の著作で、自伝に近い形でトップエキスパートになっていった過程やトッププロの思考過程、ものの考え方がつづられています。レベルは高いです、特に第4章の「My Favorite hand」の15ハンドは超難問ぞろいです。

全体で8章構成で
第1章 Ziaとの出会い
第2章 若いころ
第3章 アメリカで
第4章 お気に入りのハンド
第5章 失敗したハンド
第6章 もろもろ
第7章 倫理
第8章 世界選手権
となっています。
Sei_nさんがホームページの書評で書いておられるように、ローゼンバーグ氏の天分は驚くばかりで、もしかしたら世界一プレイが上手かもしれないと改めて思いました。そして、それ以上に彼の高い倫理性、スポーツマンシップに感動しました。
いくつか紹介します。

第3章「気性」から
 ボブ・ハマンと何回か組んで、ハマンのプレイで最も感心したことは、今プレイしているハンドへの集中力だったと書き、同様な集中力を得られるよう努力したと欠いています。
で、1995年のスピンゴールド準々決勝で、大失敗をしたハンドの次に次のようなハンドがきたとあります。
N:Zia ビッド

W  N  E  S
1H 1S 4H 4S
オールパス


OL:
AT73
J4
AT3
A532
S:Me
Q9852
76
K94
QJT
 ウェストはK、Qと取った。Aを持ってると思われるエースとがシフトを要求(シグナルで)、ウェストは3順目8を出してきた。ここでどうするか。
 ウェストがKとKを持っていることは明らか。とすると、ではトータル1敗ですませることができそうだ。ルーザーは、が3−3の分れなら、4枚目のの下に捨てられるし、そうでない場合はエンドプレイが必要になってくる。
 ここで突然パーフェクトラインが浮かんだ!ダミーからローを出してイーストのJをKで取る。4順目Q。K−Aとなる。Jでハンドに戻ってQを出す。K−A。次にダミーからスモールを出す。が3−3ならトランプを負けに行ってクレーム。イーストが2枚でこのをラフする場合、もしJxという持ち方ならJでラフせざるを得ず、その段階でエンドプレイにかかることになる。イーストは長考の末ラフせずにディスカードした。
 この段階で、イーストはJを持っていないと予測、イーストへのエンドプレイはあきらめる。ウェストは2524らしい。そこで8順目Aでダミーにわたり4枚目のをラフして10順目でウェストにスローイン。メーク。
AT73
J4
AT3
A532
KJ 64
KQ952 AT83
85 QJ762
K976 84
Q9852
76
K94
QJT
 全体のハンドは上図。イーストの6順目のラフせずディスカードは失敗であったが、しかし、もし私がJを持っていてTでなくスモールを持っていたとしたら、ラフは失敗になる。いずれにしても、ここで言いたかったことは、大失敗の後すぐに次のハンドに集中できたことである。

第6章「ビッディングシステム」から
 ボブ・ハマンはかつて、システムはゲームの3%程度しか影響しないと言ったそうで、ローゼンバーグ氏も同じように思うと述べています。ただし、それはどのような基本的システムやコンベンションを選ぶかは結果にそれほど影響しないという意味であって、ある場面でお互い同じように考えることはとても重要であり、そのための準備は必要であると力説しています。例えばブラックウッドについて、何時間もかけて様々な場面での相互に共通理解ができていれば強力な武器になりますが、そうでなければ大失敗のもとになるだけと述べています。

 他方、エキスパートになるためにマスターしなければならないと考えている一つの面、それは−プレイしながらビッドすべし−であると明確述べています。
さらに、ゲームをビッドするかどうか判断するときの秘訣として、パートナーが3種類のハンドを持っていると想定してみるとあります。ベストハンド、ワーストハンド、アベレージハンドの3種類です(これはZiaから習ったとあります。)
 この思考パターンを身につけることで、時々普通では考えつかないコントラクトに到達できることがあるとしています。
 具体的な例として
KJ853 K4 AK JT94
こういうハンドを持っていて、パートナーが2でオープン(建設的ウィーク2)、RHOが3とオーバーコールしたとします。多くのプレイヤーは深く考えずにすぐ4とビッドすることでしょう。しかし、ここで、パートナーが通常のウィーク2のハンドを持っていると想定すると3NTというビッドが良いビッドであることが見えてきます。 そして、さらに、プレイしながらビッドすることによって、集中でき、事前準備もできるのであなたのでクレアラープレイもよりうまくプレイできるようになると述べています。

第6章「ダブルダミーの問題」から
 1998年、フィル・マーチンが私に出したプレイ・オア・ディフェンドの問題を紹介しています。
763
J8
AKQ65
T73
QJ9 KT854
64 952
JT87 94
Q864 K95
A2
AKQT73
32
AJ2
設定は、ラバーブリッジでサウスが6をビッドしてウェストからQがOLされたところ、ウェストとサウスが急用で席をはずれなければならなくなった。さてここでウェスト、サウスのどちらにすわって落としに行くか、作りに行くかどちらを選びますかというものです。ここから思考過程がつづられています。
 まず、デクレアラーの立場で考える。唯一のチャンスはウェストをスクイズにかけること。QをAで取って、トランプを走る。ウェストは1枚と1枚は捨てられる。しかし、5枚目ののときに捨てるものに窮する。4枚と3枚を守るために最後のを捨てざるを得ない。このときダミーは2枚と1枚をピッチ。で、6枚目ののとき、ウェストはを捨てざるを得ず、ダミーからはを捨てる。そこで、でダミーにわたってTをリードする。イーストにリードを入れないようにしつつで2トリックを確保する(イーストがカバーすればAで勝ってスモールを出す)。とても簡単。何か問題があるのか。
 このとき、欠陥を見つけた。5枚目ののとき、ウェストはを捨てる必要がなく、を捨てても安全だということだ。そうなると、スモールを流せば(勝たれて)をキャッシュされてしまう。
 そこで、最初のQをダックしてみる。続くを勝ってを走る。
5枚走ったとき、ウェストは1枚、4枚、1枚残さざるを得なくなる。もし、0、4、2という残し方にすれば、6枚目ののときにを捨てざるを得ず、そうなると今度はを3枚取るとイーストがのスクイズにかかることになる。ウェストが1、4、1枚という残し方をした場合であっても、6枚目ののときに、を捨てれば、イーストがのスクイズにかかるし、Qを捨てればをフィネスできる。言い換えればウェストが「ガードスクイズ」にかかっているわけである。これで良いのでは?
 いや、ウェストは2順目を続けない。2順目にスイッチすることでガードスクイズをはずせる。かつ、そのときにはQを出すことが大事である。結局、デクレアラーはこの6をメークできないことが分かった。
 そこで、私は出題者のフィルにに答えた。
わたし「ギブアップ。メークできない。」
フィル「ではディフェンスに回るということだね。」
わたし「そのとおり。」
フィル「じゃあ、1点につき10セントでどうだい?」(やや熱心に。)
わたし「OK」
フィル「では(1順目)をダックする。」
わたし「Qにシフトする。」
フィル「5ドル。」
わたし「ほえ?」
フィル「コントラクトはダウン。しかし私はマイナスしない。アナーポイントが100点入るからね^^」
難しい問題の後、締めくくりはジョークで終わるという、なかなか優れていますね^^



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