(ブックレビュー詳細)
マイク・ローレンスさんの本は、概してたいへん読みやすいですが、この本はとりわけ読みやすいです。字も比較的大きいですし、例題も分かりやすく、印象に残りやすいです。ブックオブザイヤーを受賞するだけのことはあると思いました。
冒頭で、「この本はセーフティープレー、スクイズ、エンドプレーなどのテクニックを解説する本ではありません。この本は、上手なプレーヤーが 正しくゲス(guess)するために必要とされる思考過程を解説するものです。」と書いてあります。
すでに「カードプレーテクニック」や「ロジカル・ブリッジ・プレー」などで基本的な知識はあって、実戦でも結構使っている考え方ではありましたが、「絵札の持ち方」に集中して解説されていますので、あらためて新鮮に頭に入ってきました。
構成は 次のようになっています。
第1章 ケースの分類
第2章 手がかりを発見する
第3章 手がかりを分析する
第4章 手がかりを開発する
第5章 カウンティング
第6章 ウィッシフル・シンキング
たとえば、「手がかりを分析する」章では、次のような例題が最後にのっています。
North ビッド
E S W N
1H 1S 2H 2S
3H P P 3S
P P P
OL:T(from Wast)
QT76
93
K53
K642
South AJ842
KJ2
76
AT7
質問1.A,Q,Jは誰が持っていますか?
答え、AはEが持っていることは明らかです(WはAのアンダーリードをし
ないでしょうから)。JもEでしょう(Wが持っていればJTとあればJ
からリードするでしょうから)。QもおそらくEです(WはQT9と持っ
ててアンビッドスーツのTからリードするとは思えません。)
質問2.Wのリードはシングルトンかダブルトンでしょうか?
答え、いいえ。そうだとすると、Eはを6〜7枚持っていることになります
がEは1でオープンしていますから、それはありえないでしょう。
質問3.Aはどちらが持っているでしょうか?
答え、Wが持っています。でなければ、どうしてWはをリードするでしょう
か。
質問4.Qは誰がもっているでしょうか?
答え、Eが持っているでしょう。WがA,Q両方持っているという通常はあり
えないケースを除いては。
質問5、Kは誰が持っているでしょう。
答え、Eが持っているでしょう。1オープンからみて。
質問6、1トリック目にダミーからローを出したら、Eは
Jで取って
Tを
リードしてきました。どうしますか?
答え、Jをださなければいけません。
全体のハンドは次のようになっています。
QT76
93
K53
K642
53
K9
A54
QT876
T9842
AQJ
J98
Q53
AJ842
KJ2
76
AT7
第2章「手がかりを発見する」から実戦例をもう一つ。
Billy Eisenbergのプレーです。次のようなハンドでOLは6、ダミーの
QにEがKをかぶせてきました。ここで、オポのハンドをどう読みプレーするか考えてくださいとあります。ハンドは
North ビッド
W N E S
1S P 2S 3H
P 4H P P
PQ5
Q976
AT
95432
South A7
AJT854
KJ3
T8
Eisenbergはどう考えたか。オポの絵札は19hcp。そして、1トリック目でEがに3点持っていることが分かった。Wは
をリードしてこなかったので、A,Kを両方持っていることはないだろう。そうすると、少なくともEは
に3点持っていると仮定できる。Eは
Kは持っていない。もし持ってれば、Eは9hcp持つこととなり、Wは10hcpとなってしまうから。したがって、
KはWにあってフィネスはきかない。またWは
Qも持っていると推測できる。とすれば、ここで、
Aを出してKが落ちてこなかったとき、
フィネスして成功したとしてもダミーの
をハンドの
で捨てるためにハンドに戻るエントリーがなくなってしまう。
Eisenbergは1トリック目でここまで考えて、Aで勝って 2トリック目に
Tでフィネスし、
Aをキャッシュして、ハンドへの唯一のエントリー
Aでハンドに戻って
Kでダミーの
5をディスカード。4
はメークした。
全体のハンドは次のようになっていました。
Q5
Q976
AT
95432
J9862
KT43
K3
2
Q85
97642
AQJ
K76
A7
AJT854
HJ3
T8
マイク・ローレンスは、このチームメイト アイゼンバーグのプレーを、カード配置を早い段階で読みきった最もすぐれたプレーの一つであると紹介しています。おもしろいですね、ほんとうに。かつ、トッププロでも、基本としているところは同じなのだと改めて思い知らされました。
![]() 戻る |
![]() トップへ |
![]() 次へ |